旅の空、郷里の風

3年ぶりの帰省だった。 コロナ禍で、帰る機会をなかなか得られなかった。この間、首都圏を一度も離れることなく、過ごしてきた。 久しぶりに乗る新幹線。列車がスピードを上げ、車窓の景色が流れていく。 気持ちが沸き立った。出発前から、きっと解放感に包…

最高としか言いようがない

8月31日(水) 山口洋+古市コータロー「50/50」ライブへ。 2人のエレキギターによるセッション、古市さんの色気に、山口さんの熱さに痺れた。そして、ギターを弾くことを心底楽しんでいる彼らの姿に、俺も好きなことをやり抜きたいと思った。 とりわけ、胸…

タルコフスキー

友人たちにも勧められて、タルコフスキー監督の映画を見てきた。遺作となった『サクリファイス』(1986年)。正直、序盤は苦痛だった。 登場人物たちの哲学的な独白や会話が続き、映像は引きで、長回し。寝不足もあって、何度か居眠りをしてしまった。だが、…

東北を訪ねて

ちょうど1週間前、取材で東北を訪ねた。三陸沿岸の地は、至るところが更地になっていた。 山を切り開いて高台を築き、住宅の造成地としていた。クレーン車が目に付いた。震災から5年近くも経つというのに、仮設住宅が残っている。今も「仮住まい」での暮ら…

町のレコード屋

本厚木での取材前、駅の近くのCDショップに立ち寄ることにした。 地元出身のバンド、「いきものがかり」をインディーズ時代から応援していた店だという。それが、ネット通販やダウンロード販売の時流には勝てず、今月いっぱいで閉店すると新聞記事で知った。…

「パンとペン」〜物書きの魂

○土曜日。 ノンフィクション作家・黒岩比佐子さんの講演会に行く(会場は、神保町の東京堂書店)。この10月に刊行された著書『パンとペン〜社会主義者・堺利彦と「売文社」の闘い』をめぐっての話。堺は明治期、幸徳秋水と並ぶ社会主義者としてはよく知られ…

インディペンデント

日付が変わった、10時間ほど前のこと。 出先で仕事が終わった後、しばらくネット検索で徘徊していた。そうしたら、懐かしい名前に出くわした。先達の音楽ライターだった。 彼女は、メジャー、インディーズに関係なく、自分が惹かれたミュージシャンのことを…

海辺の小さな町へ

○日曜日。 海辺の町へ取材。老舗の個人商店を2年ぶりに訪ねる。おじいさんから孫、近所の方も来て、昼食と夕食をいただく。大家族に囲まれての、心和むひととき。みなさんから、指折り数え切れないほどの、たくさんの心遣いをいただく。身に余った。ひとつ…

持続する精神

○土曜日。 今年で、数え年90になる報道カメラマンの講演会&写真展に行く。 「遺言」と題されたように、氏の思いの丈を聴く場であった。先の戦争、従軍体験が自身の原点というだけに、その後の知見も交えての戦争の話が多くを占めた。憲法「改正」への危惧も…

一緒にダンスを踊るように

昨夜ラジオを聴いていたら、元NHKアナウンサーの山根基世さんが出ていた。20世紀の世界を描いたテレビドキュメンタリー「映像の世紀」のナレーションをはじめ、山根さんの語りは、抑制的で、凛としていて、とても好きなのだが、彼女はまた、インタビューの名…

仰げば尊し

週末から断続的に書いていた原稿を、ようやく脱稿する。 ささやかだけど、読者に「ボーナストラック」を付けようと心がけて、書いた。低迷気味だった気分が、少し上向く。 我ながら、単純なヤツだと思う。いくらか、気持ちが解放されたせいだろうか。 銭湯か…

出航

「急ぎすぎてはいけない。道は、ずっと同じ速さで歩いた方がいい。長い道のりなんだ。暴食には味がなく、早歩きは長続きしない、と言うぞ」(ポン・ヂェンミン『山の郵便配達』集英社、2001年)過日、たまたま古本屋で見つけて読んだ中国の現代小説の一節で…