タルコフスキー

友人たちにも勧められて、タルコフスキー監督の映画を見てきた。

遺作となった『サクリファイス』(1986年)。

正直、序盤は苦痛だった。
登場人物たちの哲学的な独白や会話が続き、映像は引きで、長回し。寝不足もあって、何度か居眠りをしてしまった。

だが、ヨーロッパに核ミサイルが投下されたという場面以降、徐々にその世界に惹き込まれていった。

見終わった後、不思議な感覚に包まれた。
喜怒哀楽という明確な感情ではない。
どこまでが現実で、どこからが幻想なのか。
映像と音の美しさとともに、その入り混じった物語世界に身を委ねていた。
映画館を出て、新宿の雑踏を歩いていても、浮遊感がしばらく続いた。

「語る」というより、「感じる」作品なのかもしれない。
こんな映画は初めてだった。