旅の空、郷里の風

3年ぶりの帰省だった。

コロナ禍で、帰る機会をなかなか得られなかった。この間、首都圏を一度も離れることなく、過ごしてきた。

久しぶりに乗る新幹線。列車がスピードを上げ、車窓の景色が流れていく。

気持ちが沸き立った。出発前から、きっと解放感に包まれるだろうとは思っていたけれど、予想以上だった。

それまでは電車に乗ると、もっぱら本を開いていた。けれど、この日はほんの少し頁を繰っただけ。

本を読むなんて、もったいない。いま、このときの景色を味わいたい。そう思って、窓の向こうをずっと眺めていた。そして、眠くなったら、眠った。

             *    *    *

郷里の駅に着いたのは、平日の昼過ぎだった。駅周辺は相変わらず閑散としていた。

実家に向かう道のりも、人とすれ違うことはあまりない。車の往来もそれほどではない。2階建てか平屋の一軒家がほとんどのため、空が見渡せる。道路は広く、家々も適度に離れている。

こんなに伸び伸びと歩けるなんて。スペースがあることの心地よさを感じた。

普段は、人も車もビルも多い場所で暮らしているせいもあるだろう。東京で生活するようになって、ずいぶん長い時間が立つけれど、いまだ慣れ切っていないことにも気づく。

横断歩道を渡ろうとすると、向こうからやって来る車は必ず止まり、道を譲ってくれた。バスとおばあさんが道を譲り合い、しばらくお互いに笑顔で佇んだまま、という光景も目にした。

なんて、いい街なんだ。

手前味噌を承知で、そう感じた。