「パンとペン」〜物書きの魂

○土曜日。
ノンフィクション作家・黒岩比佐子さんの講演会に行く(会場は、神保町の東京堂書店)。

この10月に刊行された著書『パンとペン〜社会主義者堺利彦と「売文社」の闘い』をめぐっての話。堺は明治期、幸徳秋水と並ぶ社会主義者としてはよく知られている。だが、「売文社」という名の日本初の編集プロダクションを立ち上げ、海外文学を翻訳していたとは知らなかった。運動への厳しい弾圧の中、「食べることと書くこと、運動を続けること」の狭間で、ユーモア精神で闘い抜いた姿を、黒岩さんは描いたのだという。

講演は、この400ページ以上の大著への、素晴らしいプロローグだった。同時に、本のタイトル、「パンとペン」を身をもって伝えられた気がした。黒岩さんは重い病と闘いながら、執筆を続け、見事に貫徹された。間近でお話を聴くことで、物書きとしての魂を教わった。背筋が伸びた。

紹介して下さった中で、印象に残った堺の言葉。

「自分たちのやっていることは、もしかしたら道楽なのかもしれない。でも、道楽は道楽でも、命がけの道楽をしてるんだよ」