インディペンデント

日付が変わった、10時間ほど前のこと。
出先で仕事が終わった後、しばらくネット検索で徘徊していた。そうしたら、懐かしい名前に出くわした。

先達の音楽ライターだった。
彼女は、メジャー、インディーズに関係なく、自分が惹かれたミュージシャンのことを、いつも丁寧に、文に紡いでいた。足繁くライブに通い、楽曲を聴き込んでのインタビューは、学ぶことが多かった。

僕は、久しぶりに彼女のサイトにアップされていた、好きなミュージシャンのロングインタビューを読みふけっていた。

だが、その後、「検索」欄の下に浮かぶ文字を見て、愕然とした。
数日前に、彼女は亡くなっていたのだ。

虫の知らせ、だったのか…。

一時期、僕は彼女のサイトをよく読んでいた。そこで取り上げられているミュージシャンが、自分の好みと重なったこともある。ヒートウェイヴソウル・フラワー・ユニオンリクオ沢知恵京都町内会バンド……etc。

「ほぼ毎日更新」のブログも読んでいた。そこには、日々の暮らしのことが実に詳しく記されていた。毎日のようにライブに出かけ、時には、ハシゴもして、しかも、その多くは自腹だったはずだ。ミュージシャンを応援する者として、また、書く対象との距離を保つという意味でも、そのスタンスに共感した。かくありたいと思った。

業界に流されず、インディペンデントのライターとして歩む。そこには、生活とのかねあいも当然、生まれる。時には、朝方までバイトをしながら糊口をしのぎ、好きなミュージシャンのことを伝えんとする。しかも、病を押して。そんな体を張った姿にも圧倒された。

だからこそ、ミュージシャンと深い対話(インタビュー)ができたのだろうと思う。

直接、お目にかかって、お話しできなかったことが、ほんとうに悔やまれる。
何度かメールでやりとりしたり、ネットラジオに投稿し、読んでもらったことはあった。ライブハウスでニアミスしたことも、きっと何回もあったろう。彼女がブッキングを手がけていたライブハウスにも行ったことがあったのに……。

奇しくも、今日は拙者の誕生日。
先達からメッセージを受け取った気がした。

角野恵津子さん、ありがとうございました。

*彼女が、どれだけミュージシャンから信頼され、愛されていたか。ネットを見ると、心のこもった追悼の言葉が数多く、綴られている。